枝魯枝魯ひとしな 2008年12月 <「安心・緊張」考 編>

2ヶ月ぶりの枝魯枝魯ひとしな!
前回記事の「上下西東 2008年11月」でも書いたように、枝魯枝魯は我々にとって一つの生活のリズムであり、陳腐な表現ではあるがいわゆる「憩いの場」であった。今回のように暫く振りに訪れると、故郷に帰ってきたような安心感や懐かしさ、温かさ、心地よさを自ずと感じてしまう。

と、書き始めたところで一つの疑問が頭をよぎった。
私はいつから枝魯を「憩いの場」と感じるようになったのであろうか? 
確信を持っていえることは、松本氏が料理長に就任してから、ということ。
では、松本氏就任前後でどのように世界が変わってしまったのだろうか?

(注: 以下、つらつらと長いですので、料理の紹介は次回の記事へと延期します。)

枝國氏が料理長であったときは、彼の料理を味わい楽しんでいたことはもちろんだが、それと同時に、彼が料理を通して真剣に勝負を仕掛けてくることに対する期待感と緊張感が混ざりあった一種独特な「勝負の場」という雰囲気をカウンター上に感じていた。そして、それが枝魯枝魯に惹き付けられる大きな理由だったはずだ。

では、今、松本氏の料理やカウンターでのやりとりに「緊張」を感じるかどうか? と問われれば答えはNoである。

松本氏が料理や客をなめているわけではない。彼は常に真剣だ。出された料理には斬新な驚きもあるし、味も全く悪くない、というより、いつも通りに美味しく安心して食べられる。今回も食事の途中にこの「安心感」を何度もしみじみと感じたものである。「安心感」とは、現在騒がれている産地偽装や農薬などという次元の低い話ではなく、「ここに来れば、板前の創意工夫が感じられ、かつ、ハイレベルな味が保証された料理がいただける」という「安心感」である。

どうやら、このあたりの「安心感」が大きな鍵を握っているようなのだ。安心するということは、弛緩状態になることであり、そこには緊張感は決して生まれない。

私の中の「安心感」とは「最初から美味いことが分かっている」ということで、それは通常であれば料理人に対する最高の褒め言葉なのであろうが、今になって考えると枝國氏にとっては、美味いという点はクリアして当然のこと、すなわち、客に料理を提供する上での最低限のこととしてとらえられていたように思える。
美味いという点は単なる生得であり、それを前提に自らが創り上げた独自の世界=我々にとって未知の世界に我々を引きずり込む強力な力が彼の料理には潜んでいたように思われる。我々が抗うことのできないその強引な力をもって引きずり込まれるスリルや摩擦が緊張感を生んでいたのではないか。
枝國氏の凄いところは、そういった次元の高い世界観を創り上げ、そこに人々を落とし込むことができる魔力であったのだ。しかし同時に「安心感」が逓減させられたのも否めない事実であろう。

客が店に期待することは千差万別なのであるから、「安心感」を感じる店と「緊張感」を感じる店に優劣はない。同じように「安心感」が前面に出る板前と「緊張感」を前面に出す板前にも優劣はない。
既に「松本氏の店」なのであるから、枝國氏が目指していた店と同じはずもない。松本路線を無意識に受け入れて「憩いの場」として通い続けていたのだから客としてはどっちでもいいことなのかもしれない。

しかし、「憩いの場」を認識してしまった古くからの客としては、「緊張の場」を懐かしむ気持ちがあるのもまた事実である。人の気持ちを昂ぶらせるには、「安心感」よりも「緊張感」のほうが何倍も強い力を持っているのだから。

ということで、まだ訪れぬパリ店への期待は高まる。環境が全く異なるかの地で枝さんが創り上げる世界であるから、日本での世界よりももっと引力が強いはず。あの毒気ある目に中てられて引きずり込まれることを緊張しながら期待しておこうっと。松ちゃんが創り上げてくれている「憩いの場」と対をなし相互補完となることは、古くからの客にとって面白いことこの上ないしね。

と、後になってつらつら考えてはみたが、この日も件の「安心感」とともに、深夜0時をまわってユルユルの雰囲気の中にどっぷりと浸かっていたのであった。

久しぶりに弛緩全開のこの人に会い・・・

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深夜にお馴染みのこんな風景をニコヤカに見つめ・・・

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牛乳好きのこの人に、差し入れをし・・・

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自らも乾杯の輪に加わる。

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残念なのは、こちらの方の髪型。
元はアンパンマンだったというのだが、既に原形を保っていません。

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原形はこのようなものだったということで。

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(次回の記事に続く)



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この記事へのコメント

リーチャン。
2008年12月21日 11:36
お久しぶりです。
お元気そうですね。娘が東京へ行ってから、何度か東京へ行くこともあり、上下西東・・・訪れたいと思いながら今だ果たせずです。来年は、と思っております。
阿仁えの
2008年12月22日 23:13
>リーチャン。さん
本当にお久しぶりで。
いよいよ間もなく卒業なんですよね?
(最近、ネットの生活から離れていて皆さんの近況を把握しておらずすいません。)

上下西東もいいのですが、渋谷駅前の「山城屋庄蔵」もまたよしです。
ご都合が合えば、東京メンバーで是非行きましょう。

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